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夏目漱石『心』の英訳

分野
比較文学
キーワード
夏目漱石、『心』、英訳、近藤いね子、エドウィン・マクレラン、メレディス・マッキニー
社会環境学部 社会環境学科

教授 徳永 光展

研究概要

 夏目漱石の『心』には3種類の英訳がある。近藤いね子訳(1941年/日本)、エドウィン・マクレラン訳(1957年/アメリカ)、メレディス・マッキニー訳(2010年/オーストラリア)は、それぞれの翻訳者による作品解釈の結晶だが、英語圏で作品が受容されるためには越えなければならない問題点をも浮き彫りにしてくれる資料である。本研究では3つの英訳を研究対象とし、英語としての自然な仕上がりを見せるために、原文からはかけ離れたとみられる表現を取り上げ、考察する。中でも日本独特の文化的背景に根差した語彙、語法に的を絞り、それらが近藤、マクレラン、マッキニーの諸訳でどのように異なって処理されているか、または共通点を持っているかという観点に立った議論を行う。換言すれば、日本独特の、言わばローカルな表現がグローバルな視野に立てば如何なる変容を余儀なくされるかについて議論を深めるものである。

利点・特徴  本研究では、夏目漱石『心』英訳を題材に、英文としては自然な仕上がりを見せてはいても、日本語原文のニュアンスからは少々離れた表現になっているのではないかと考えられる点に着目してみるが、(1)問題点はどうしても旨く訳せない日本語表現が英訳中に残存している状況にあり、(2)そのより所となる根拠は再翻訳を試みた場合、原文のニュアンスからは相当離れた表現が散見されることにあり、(3)再翻訳を通して明らかとなったのは日本独特の文化的背景に根差した語彙や同時代の読者のみに共有されていた表現は翻訳に適さないという問題が残ることであり、(4)読者が翻訳され切れていない表現につき、どのように理解を深めればよいのかという作品享受の在り方が考究されなければならない事実が明らかになるのである。
応用分野 比較文化、国際教養、異文化コミュニケーション

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