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山崎豊子戦争三部作論
-国際関係に翻弄される個性-

分野
日本文学
キーワード
山崎豊子、第二次世界大戦、『不毛地帯』、『二つの祖国』、『大地の子』
社会環境学部 社会環境学科

教授 徳永 光展

研究概要

 山崎豊子の『不毛地帯』、『二つの祖国』、『大地の子』では、ソビエト、アメリカ、中国といった大国と日本の狭間で揺れ動く数奇な登場人物が描かれるが、多くの読者に支持されたからこそ、連載小説として作品が書き続けられたという事実がある。読者は、シベリア抑留体験者の壹岐正、日系アメリカ人二世の天羽賢治、中国残留孤児の陸一心を通して、二つの文化を背負う息苦しさに接したが、このテーマは1970~1980年代の大衆に受け入れられたのであり、そこに山崎のセンスが光ったのである。

利点・特徴

1.どこに注目し、何を論じるか

 山崎豊子の戦争三部作は、二つ以上の文化・言語を持った個性が戦争状態にあって、純血でないために排除されたり、逆に利用されたりする状況を描いたものである。

2.何を分析するか、どういう解釈をするか、どういう角度から論じるか

 戦争という駆け引きに二国間の境界に立つ人物は翻弄される宿命を背負っている。異文化間コミュニケーションには限界があり、越えられない壁が存在する。また、歴史的事実と作品との異同や、モデルと作中人物との異同を考察すると、異なっている点が作者の創作と言える。

3.新しい見解は何か、何を結論とするか

 山崎の描く人物像が週刊誌の読者に受け入れられた。彼女の小説を読むために、サラリーマンが雑誌を買った。戦後の男たちの理想は戦中を戦い抜いた英雄にあった。

4.2018年において本研究を行う意味

 敗戦後73年が経過した。戦争経験は風化し、戦争を扱った作品を読むという行為までも風化しかねない雰囲気がある。本研究は、平成が終わる今、昭和史(戦時期と敗戦後)を問う営みでもある。同時に、戦後処理から現在に至るアメリカ主導の政治的舵取りが明らかになる中で、日本が再軍備すれば再び惨禍に直面するという歴史の繰り返しが起きかねないことへの警笛を鳴らすという意味をも併せ持つ。

応用分野 歴史学、国際教養、異文化コミュニケーション

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